【イスラム教】思いやりの宗教ゆえ商売下手?イメージがガラリと変わった出会いのキロク。
シンガポールで初めて友達になった親友が帰国し、見送る側の寂しさと、出会いへの感謝を噛み締めている今日この頃です。
シンガポールは出入りが激しい、"transient"な国だとつくづく感じています。
筆者自身も一時的に身を置いている中で、さまざまな出会いがあり、イスラム教について考える機会ができました。
今回は
①語学学校でイスラム教の教えや習慣について教てくれたインドネシア人のクラスメイトの話と彼女との思い出
②ホーカーで出会った日本人の血を引くイスラム教徒の方の背景
の2つの出会いが心に残っているため、記事にしようと思います。
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1.イスラム教とは〜インドネシア人の友達が教てくれたこと〜
2.イスラム教徒は商売下手?〜ゲイランセライで感じたこと〜
3.ホーカーで出会った日系ムスリムのSTORY
4.筆者の感想
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1.イスラム教とは〜インドネシア人の友達が教てくれたこと〜
筆者は英会話スクールでインドネシア人のクラスメイトがいました。授業内や、スクール後のランチ等で会話をする中で彼女が聞かせてくれた「イスラム教」は筆者のイスラム教のイメージをガラリと変えました。
・ヒジャブ
⇨女性が肌や髪の毛を覆う布(スカーフ)のこと。
彼女の説明「女性の髪の毛や肌は性的魅力があり、男性にとって誘惑になる。悪い人から身を守る(襲われないようにする)ため女性は肌や顔を隠す必要があるため着用する」
・断食(ラマダーン)
⇨1年に1度、1ヶ月間、日の出から日没までの間、絶食・絶飲すること。期間中は日没後のみ飲食を行う。
彼女の説明「ラマダーンはお腹が空くけど、貧しい人の気持ちを知るため、理解するためにある期間。ラマダーンを守るとアッラーとより近しくなれ、死後は天国に行きやすいと言われている」
・礼拝(サラート)
⇨1日5回決められた時間にメッカ(サウジアラビア)の方角を向いてアッラーに祈りを捧げること。手足を清めてから行う。
彼女の説明「1日5回の礼拝は必ず行う。5回のうち、1回は早朝、日の出前の時間だけど、必ず起きてヒジャブを被り祈りを捧げる。」
・喜捨(ザカート)
⇨富める人が貧しい人へ財産を分けること。直訳すると「浄化」を表し、神から預かった富を貧困者救済に充てることで感謝の形を体現することになる。イスラーム教の世界観ではこの世の全ての物は神のものであるため、富は神からの贈与にあたり、溜め込むものではない。
彼女の説明「神は自分の財産の半分は貧しい人に分け与えるべきだと考えた。だから物乞いや寄付は自然に行なっている」
実際、1年に1度、貧しい人に自分の財産を寄付する日があるようで、彼女はその日に寄付金を分配する団体(NGOのようなところでしょう)へ寄付をすると言っていました。
というふうに、イスラーム教を唱えたアッラー(神)は性悪説を持って、人に優しくするよう教えたのだということがわかりました。
実際日本の社会を見返すと、人間は富を追いかける欲のある生き物だし、性犯罪だってゼロではありません。(ついでに言わせていただくと、日本は性産業がお盛んな割にきちんとした性教育がなされず、歪んだ思考を持った成人が量産されている国でもあると思います)
また、彼女はテロ事件を起こしたり、女性の権利を抑圧したりしている中東やアフリカの一部の原理主義者・過激派組織をイスラム教と捉えないで欲しいとも訴えていました。私自身、インドネシアでイスラム教を信仰する彼女のイスラム教とは全くの別物だと感じました。
〈彼女の過ごし方について〉
戒律が厳しいイメージのイスラム教ですが、彼女はシンガポール滞在期間は知り合いもいないため、ムスリムの服装をするのはお祈りの時のみに限定していました。(インドネシアではヒジャブをかぶるのが日常だそうです)
豚を食べてはいけない、タバコを吸ってはいけない、お酒を飲んではいけないというようなルールがある中で、大抵は寛容ですが「豚だけは絶対に食べない」そうです。
実際、彼女は未成年のためお酒は飲まないけど、タバコは吸っていました。
「男性がタバコを吸っていても何も言われないのに女性がタバコを吸うと理由を問われる。それはなぜだと思う?」と問われたことがあります。
筆者はあまり深く考えたこともなかったため、回答に困りましたが、「女性の方が、美容や健康に関心が高いから体に悪影響を及ぼすイメージが強いタバコを吸う人口も少ない。だからこそ珍しいがられるんじゃないかな」と、伝えました。(英語のためどう伝わったかは謎ですが、納得してくれました)
宗教への偏見を嫌う、彼女らしい質問だと思いました。
(写真:彼女が喫煙所で知らない人から火を分けてもらっている様子)
2.イスラム教徒は商売下手?〜ゲイランセライで感じたこと〜
シンガポールに来た当初、ホーカーで出会った中華系シンガポリアンに「僕は日本が大好きなんだ」と言って朝食のスープをご馳走してもらったことがあります。
その際に「中華系とインド系は商売上手。マレー系は商売下手。中華系とインド系の商人は人を見て値段を高く設定することもある。」と教えてもらったことがあります。
シンガポール国内の複数のマーケットを回った中でも、マレー人が多く集まる『ゲイランセライ』は一番格安、お得な印象でした。(20cm程のイトヨリダイ7匹5ドル、40cm強の立派な真鯛1匹10ドル他)
安い価格設定は決して商売の上手い下手ではなく、貧しい人もいる世界で、「他人からお金を取りすぎない」という教えを守っているためなのだと納得しました。
また、マレーシアに目を向けると、マレー人優遇政策(ブミプトラ)が現代社会においても施行されています。
〈ブミプトラ政策とは〉(以下コトバンクより)
マレーシアでの先住民マレー人を優遇する経済政策。ブミプトラBumiputraとはマレーシアにおける〈原住民〉の意で,マレー人のほか,〈オラン・アスリ〉と呼ばれる非イスラム系先住民も含まれる。中国系マレーシア人(華人),インド系マレーシア人などと比較して経済的に劣位にあるマレー人を優遇し,生活を向上させ,貧富の差を解消し,政治・社会を安定させようというもの。
多民族国家でありながら人種差別を行うなんて・・・と思っていましたが、
政府は宗教に捉われることなく経済活動を行う中華系(プラナカン含む)・インド系の人種やその他移民とは違い、国教として定められているイスラム教の教えを守るを国民(=マレー人)の生活を保障する必要があったことから生まれた法律なのかもしれない、
と、想像するようになりました。
3.ホーカーで出会った日系ムスリムのSTORY
ある日、ホーカーで60~70代夫婦から相席の申し入れがありました。
そこで彼らが手にしていたチェンドルを食べ切るまでの20分ほど、お話しただけの相手ですが、とても心に残る家族の歴史を聞かせてもらいました。
70代夫婦は一見普通の中華系シンガポリアン、ご婦人はヒジャブをかぶっていたため、ムスリムなのだなあ、と多様性に富んだ国ゆえ、あまり中華系・ムスリムという印象に違和感を持つことなく会話が始まりました。
英語が堪能でない筆者に対して外国人だと察したようで出身地を問われました。
「日本人です」と答えたら、
「私の母(以下おかあさん)は日本人だった」と教えてくれました。
60~70代の方のおかあさん世代ということは戦争経験者。
戦後にシンガポールへ移住したわけではなく、シンガポールで生まれ戦前・戦後に身寄りのない孤児になり、インド系ムスリムの女性(以下おばあさん)に養子として引き取られ、日系ムスリムとして人生を歩んだようです。
日本が第二次世界大戦時にシンガポールで行った非人道的な行為を考えると、日本人を家族に迎え入れることは世間の目もありハードルが高かったのではないかと想像できます。恨みが残る戦後半世紀のおばあさんの優しさと覚悟に胸が熱くなりました。
また、日系ムスリムとしてシンガポールで生きたおかあさん自身も苦労があったことと思います。筆者の目の前にいるご婦人に命のバトンが繋がれていることに、民族や歴史関係なく、優しい気持ちで接していた数多くのシンガポール人の存在を感じることができ、温かい気持ちになりました。
そしてお話を聞いて、おばあさんが「インド系」であったこと、「ムスリム」であったことは必然だったようにも感じました。
日本がシンガポール占領時に捕虜(攻撃)の対象としていたのは英国系(英・豪)および中華系のルーツを持つ人々でした。インド系の方だったからこそ、恨みは少なかったのだと思います。
また、イスラーム教は貧しい人を助けることが教えの中に強く根付いている宗教でもあります。それゆえ、日本人だとしても孤児に対して手を差し伸べたのだろうなと感じました。
(初対面の方との20分だけの会話のため、憶測である旨、ご留意ください)
4.筆者の感想
しかし、規律は厳しくとも、教えの中に弱者を守ることが浸透していていて、人々はその教えに納得しているからこそ大部分を生活に組み込んでいるのだと思いました。
国によって厳しさが違ったり、行きすぎた思想からテロリズムに発展したり、世界で流れるイスラム教のニュースは物騒です。
インドネシアでイスラム教を信仰する友人は世界の視る目を少しでも変えたかったのだと感じました。
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