【Grave】シンガポール人のお墓事情

先日、日本人墓地についてブログを更新しましたが、今回はシンガポール人の墓地についてです。

シンガポール人の友人と何気なく婚姻にまつわる話をしていました。
日本では結婚する際にどちらかの姓(主に男性側)を名乗ることになるんだよ〜
と伝え、お墓も家ごとにあるため筆者は筆者夫のご先祖様の墓石で眠ることになるなどと
話をしてみたところ、
シンガポールならではのお墓事情を教えてもらいました。

後日ハウパーヴィラの展示にも同じ内容の記載があったため、
友人の話が具体的にイメージできるようになったため、記事にしてみました。


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1.シンガポール人の宗教
2.世界の火葬の歴史
3.シンガポールのお墓はまるでHDB!
4.筆者の感想
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1.シンガポール人の宗教
シンガポール人の宗教分布は以下の通りです。
 仏教:33.2%
 道教:11%
 キリスト教:18.7%
 イスラム教:14%
 ヒンドゥー教:5%
 シク教:0.6%
 その他・無宗教:17.5%

中華系が多いため仏教・道教が多く、続いて人口比率の高いマレー系はイスラム教、そしてインド系はヒンドゥー教・シク教を信仰していることに違和感はありません。
残るキリスト教についても、イギリス植民地時代と関係がありそうで自然な流れかと思います。
シンガポールにはたくさんの宗教を信仰する人がいて、宗教施設も様々です。
(そのうち宗教施設に行った記録もしようと思います。)

後述の「世界の火葬の歴史」でも触れますが、6つの宗教の死生観は大きく二つに分類できます。
・ヒンドゥー教、仏教、道教、シク教(発生順)
⇨魂が天国や地獄を経て新たにこの世に生を持つ。(=輪廻転生)

・ゾロアスター教、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教(発生順)
⇨魂は一つの命に宿り、死後は天国か地獄かで終了する。
(※筆者の解釈が雑なためキリスト教の「復活」の概念は輪廻転生とはまた違うという理解で進めます)

前者はアジアを起源とした宗教、後者は中東を起源とした宗教。
ハウパーヴィラの展示の受け売りですが、宗教を分類すると違いが明確になり、学びを深めると面白いなと改めて感じました。



2.世界の火葬の歴史
世界で初めの火葬と考えられているのが4万2千年前のオーストラリアで発見された遺体で、
その時期から人類の抽象的な思考や精神的な信念が生まれたとされています。

輪廻転生を信じるヒンドゥー教や仏教では現世の肉体は一時的な器とされていたため、
南アジアでは古くから火葬が行われていたようです。

中国では仏教が流入する西暦600年代までは火葬は少数派だったようですが、
仏教が広まることで一般的になったようです。

輪廻転生はなく、死後は魂が天国・地獄のどちらへ行くかが焦点のようなキリスト教では
イエス・キリストが十字架に磔にされた後に復活したことからも
肉体が重要であると考えられ、土葬がメインだったようです(ここからゾンビ物語が生まれるんですかね)
そのため、第一次世界大戦・スペイン風邪が流行してプロテスタントでは衛生的な観点から火葬が受け入れられるようになりましたが、
カトリック教会が火葬の禁止を解いたのは1963年の出来事だったようです。(わりと最近!!!)



3.シンガポールのお墓はまるでHDB!
話をシンガポールに戻すと、シンガポールは1819年にイギリス人によって拓かれた土地です。
1950年代までは土葬を中心に死者を埋葬していたようで、
「生者よりも死者のための土地が多くなる」という局面まできたそうです。

死者のために土地を割くことができないことから
1952年に「シンガポール自治政府」が都市計画と併せて埋葬について検討した結果
Mandai(シンガポール北部)に共同の火葬場を設置し、従来の埋葬地を閉鎖・制限することになりました。
(この時点では火葬に反対していたユダヤ教徒、キリスト教徒は土葬を続けていた模様)

国民がHDB(団地)で暮らすのと同じように
火葬後の遺骨を埋める墓地を「Columbarium」と呼ばれる建物にすることで土地問題を解決したそうです。
友人曰く、Columbariumにも公共のものと、民間のものがあるということでした。(It's like a condominium!)

ロッカーのようなところに遺骨を入れ、それぞれの宗教の特別な日には
掃除をしたり、お供物を持っていったり、お線香を立てたり、手を合わせたりするそうです。その辺りのスタイルは日本と変わりませんね。

ただ、このロッカー、一人一箇所を買い取る方式のため、家族でまとまって入ることはできません。
夫婦は同じ時期に購入して隣同士が空いていれば隣、あるいは近くのお墓に入ることができますが、
両親、子どもなど、世代が違うと建物が満室になっていれば同じColumbariumに入ることもできません。

また、さらに驚くべきことに
HDBが99年リースでその後は立ち退かなければいけないのと同様に
公共のColumbariumの場合、立ち退き要請が来ることがあるようです。
遺族が連絡を受け次第、遺骨を引き取りに行かなければ始末されてしまうんだとか。
シンガポールでは「無縁仏」は存在しないということでしょうか・・・少し寂しい気もしますね。

↓Googleで画像の一部

 





4.筆者の感想
日本では先祖代々のお墓を受け継ぐ慣しがありますが、
少子化の流れからか、継ぎ手がいなくなり、「親戚の本家は墓じまいした」などと聞く機会が増えました。

宗教や死後の世界は、何かを頼りにしないと苦しい・辛い状況にある人が信じるもので
宗教もお墓も死後の誰かのためではなく、今を生きている人々のためにあるのだ。と、
祖父の死後、感じるようになった筆者です。
(祖父が見守ってくれていると信じられることで前を向いて生きていこうと思たり、
 祖父に語りかけるお墓があることで祖父との繋がりを保てているような気がしたり、
 筆者自身も救われました。)

お墓に入ることは誰かに供養してもらえること。
シンガポールのお墓事情に触れ改めてお墓とは何か考え、
お墓とはこの世とあの世にいる家族が繋がりを感じるためにある場所だと改め感じました。

国土の小さいシンガポールは国の存続(国民の生活がかかっている)ため良くも悪くも
お墓の話一つとっても合理的で、「シンガポールらしい」な、と感じました。




【参考】
・ハウパーヴィラ展示物
・シンガポールの宗教分布







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