【コピとチャイ】植民地から誕生した二つの飲み物のはなし

タイのタイティー然り、シンガポールのコピ然り、
東南アジアは冷たくて甘い飲み物が好きだなあ、という印象を持っている筆者です。
辛い食べ物を食べる文化があるため口の中をマイルドにするため必然だとも思っていました。

ところが先日、シンガポール人の友人と話をしている際に
「コピはなぜあんなにも甘く仕上がっているのか?」と疑問をぶつけたところ
歴史背景があることを知り驚きました。

以前、東京の井の頭公園の一角にある「チャイブレイク」という紅茶のお店で一息ついていた際に
お店の方から教えてもらったチャイの歴史とも通じるものがあったため
コピとチャイをまとめて記事にしました。


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1.Kopiとは
2.Kopiが生まれた歴史背景
3.チャイとは
4.チャイが生まれた歴史背景
5.(余談)茶とTeaの語源は同じ!?
6.筆者の感想
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1.Kopiとは
コピとは、マレー語でCoffeeを意味します。
が、日本人がイメージするコーヒーとは違い、シンガポール、マレーシアで歴史と共に完成した甘いコーヒーのことを指します。

一般的なコーヒーとは焙煎方法が違い、
焙煎時にコーヒー豆にバター(あるいはマーガリン)と砂糖をコーティングして焙煎していて
コピティアム(コーヒーショップ)でコピを注文するとさらに練乳を加えたり、砂糖を加えたりして提供されるためとにかく甘いです。(筆者は好きですが、人によって好みは分かれます・・・)

↓シンガポールに古くからあるコピのお店「Heap Seng Leong」
↓マラッカに古くからあるコピのお店「Lung Ann Refreshments」

 




2.Kopiが生まれた背景
19世紀(1800年代)に西洋の入植者が愛飲していたコーヒーを入手して提供すべく土着の人々が購入を試みるも西洋人が使っていたコーヒー豆(Arabica bean)は高価で入手できず、
(あるいは西洋に輸出されてしまうため市場に出回る豆の量が少なかったため?)
現地のシンガポール人は安価なインドネシア産のコーヒー豆(Robusta bean)しか調達できなかったことが始まりです。

Robusta豆の特徴は、Arabica豆よりも苦く、酸味が少ないことにあるようで、
少しでもコーヒーを飲みやすく、親しみやすくするためにコーヒー豆の焙煎過程で砂糖とバター(あるいはマーガリン)を入れるようになったようです。

コーヒーを飲みたい・提供したいけど、苦くないコーヒー豆を調達できなかった現地の人々が工夫して飲むようになり、定着した「コピ文化」は植民地の歴史と切り離せないものだと思います。




3.チャイとは
まず、日本国内で「チャイ」と呼ばれているスパイス(シナモンやカルダモン)の入ったミルクティーはインドでは「マサラチャイ」と呼ばれています。
このブログ内のチャイはインド流のチャイ(ミルクティー)のことを言います。
インドではお鍋でミルクを炊いて茶葉を入れてミルクティーを作ります。(日本でいうところのロイヤルミルクティーですね)

日本ではティーパックを使ってお湯で紅茶を入れるのが当たり前なので
名称の違いを「チャイブレイク」さんで初めて耳にした時は驚きました。

↓井の頭公園の一角にある「チャイブレイク」
 こだわって調達された茶葉でできた紅茶を楽しむことができます。




4.チャイが生まれた背景
お茶を古くから栽培していた土地は中国やミャンマーと言われ、
インドで栽培が行われるようになったのはイギリスの植民地統治下でした。(自国の領土で賄った方が増益するため)

インドで栽培された紅茶は選りすぐりの茶葉のみが高級品としてヨーロッパに輸出されるようになり、
低品質な茶葉や粉末のようになってしまった"broken"や"dust"と呼ばれるような茶葉をインド国内で消費する必要が出てきました。
ただ、粉末のような茶葉はお湯に浸すだけでは濃い紅茶ができないこと、そして何より苦いことから、お鍋で煮出すようになり、牛乳・砂糖を入れて苦味を消すようになったようです。
また、元々インド人はお湯や牛乳をスパイスと組み合わせて飲む習慣があったことからスパイスを入れるようになり、マサラチャイとしても飲まれるようになったようです。



5.(余談)お茶とTeaの語源は同じ!?
お茶とチャイ、「cha」と発音が同じですよね。気に留めたことがなかったのですが、
実はどちらも語源は中国にあるようです。(日本は漢字ごと輸入しているから中国がルーツなのは当たり前かもしれませんが・・)
昔、中国で「茶」の読み方は2つあり、内陸部では「チャ」、沿岸部では「テ」と呼ばれていたそうです。

中国沿岸部との貿易等で海路により広まった言葉は、
英語の「Tea」やスペイン語の「Te」、マレー語・インドネシア語の「Teh」として定着して、

中国内陸部からシルクロード等の陸路で広まった言葉は
インドの「Chai」やトルコ語の「Cay(チャイ)」、スワヒリ語(ケニア)の「Chai」として定着したようです。

お茶の歴史を辿ると中国に行き着くということですね。
(筆者はこれを知ったとき大大大興奮しました。笑)

ちなみに、中国沿岸部はどこかというと中国南部の福建州あたりのことのようで、
シンガポールやマレーシアの中華系の先祖は福建州のような中国南部出身者が多いことから
お茶そのものや言葉が海路ではなく、直接移民によって持ち込まれたことも想像できます。
マレー語、インドネシア語が「Teh」なのも納得です!!
(現在、マンダリン(中国語)は「Cha」と発音するようです。)



6.筆者の感想
近年、コピの焙煎所がシンガポールでどんどん減っていっているようです。
1杯1〜2ドルの安い飲み物として定着してしまっているのは大衆の日常に根付いているからこそなのだろうけど
利益中心に考えると文化が途絶えるのも無理はない。(あるいは隣国マレーシアで生産されたさらに安価な豆を輸入することになるか・・・)
コピそのものはシンガポールの一つの文化だと思います。
時代とともに焙煎所がシンガポールからなくなり、他国から輸入することへのジレンマも知ることになり、
筆者自身もの寂しく感じ、複雑な心境です。

「甘くてとてもコーヒーと認識することはできない」という声も聞いたことがあります。
確かに飲み物で糖分を摂取する習慣は筆者も体に良くないとは認識していますが
コピの味自体は甘党の筆者には優しく飲みやすい味で、とても好きです。

コピもチャイも文化として生き続けることを願います。



【参考】
・コピについて

・チャイについて



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